2010 年 1 月 17 日

「学び」と「仕事」を共存させる

by koji

日本の企業社会に長いこと根づいてきた年功序列・終身雇用社会では、新卒でよーいドンの一斉スタート、定年退職で一斉にさようならという世界だったから、大学と会社の垣根がハッキリしていた。桜の花咲く四月にみんな揃って学校を出て、入社式という儀式を経てバリバリの社会人になっていく。これからスタート、私は真っ白です――という世界である。

しかし、これは日本の主流である大手企業の多くでは中心的な価値観になっていたかもしれないが、ちょっと考えてみれば、日本社会にもそうでない人たちはたくさんいたし、今でもいる。

松下幸之助氏(パナソニック創業者)、本田宗一郎氏(本田技研工業創業者)、中内 氏(ダイエー創業者)の共通点は何か、ご存じだろうか。もちろん、それぞれ日本を代表する、一時代を画した企業の創業者であるのも共通点だが、それだけではない。あまり知られていないのが、三人とも社会に出てから学校に通ったということだ。

「松下幸之助は、一九歳のときに自分で店を経営しながら、関西商工学校夜間部予科に通う。本田宗一郎は、ホンダの前身となる会社を設立し社長となった後、浜松高等工業学校(現・静岡大学工学部)機械科の聴講生となり、三年間金属学の研究に費やす。中内 は、戦後復員してから、仕事の合間を縫って旧制神戸経済大学(現・神戸大学)に戦後設置された第二学部(夜間部)に進学する」(『ビジネス・インサイト―創造の知とは何か』石井淳蔵、岩波新書)。もちろん当時と現代とでは進学率も社会背景も違うから、そのまま比較することはできないが、「仕事」と「学び」とは同時並行的なもの、相乗効果をあげるものだということがよくわかる。

また村田製作所の創業者、村田昭氏は京都の陶磁器店に生まれたが、父親の知人が京都大学冶金教室で助手をしていたのを頼りに、そこに通いつめて技術の教えを乞うた。村田氏は学生にすらなっていない。そこからセラミックフィルターなどで世界的な高シェアを持つトップクラスの電子部品メーカーを育て上げた。

トーヨーサッシ(現トステム)の創業者の潮田健次郎氏は日本経済新聞に連載された「私の履歴書」(二〇〇八年三月)の中で、社長在任中に自らセミナーに通って学んだことを自身の経営に活かすことができたと書いている。それによれば、同じセミナーに参加していた大企業の役員・部長クラスの人たちは「大学の先生は実務を知らないから、空理空論で役に立たない」と不平を言っていたが、潮田氏は「学者は経営を普遍的に話すから、私にとって応用が利きやすい」と感じていたと語っている。

こうした事例は枚挙に暇がない。これらはみな「学び」と「仕事」の共存を示す事例と言えるだろう。

明日は、「プロ学生」の時代がやってくる(01/18)です。

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目次
はじめに(12/24)


第1章「就活」の時代は終わった
「就活」は賞味期限切れ(12/25)
誰が次世代の人材を育てるのか(12/26)
企業への「所属」は頼りにならない(12/27)
安定とは休みなく進化しつづけること(12/28)
終身雇用と新卒採用は一体だった(12/29)
有名大学至上主義の背景(01/04)
なぜインターンシップが増えたのか(01/05)
変わる個人と会社の関係(01/06)
「就活」時代の終わりの始まり(01/07)


第2章「就活」の<ステップ0>
勝負はスタート時点でついている(01/08)
料理のおいしさは素材で決まる(01/09)
すぐに<ステップ0>を始めよう(01/10)
就活の「早期化」はほんとうに問題なのか(01/11)
学生のキャリア意識の高まり(01/12)
研究室と企業の関係(01/13)
人を育てる機能をどこが担うか(01/14)
企業から人材育成力が失われた(01/15)
みんなで人を育てよう(01/16)
「学び」と「仕事」を共存する(01/17)
「プロ学生」の時代がやってくる(01/18)
社会で役割を果せる力をつけろ(01/19)
目次の続きはこちら


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