2010 年 1 月 15 日

企業から人材育成力が失われた

by koji

しかしこの十五年ほどの間に、企業は人を内部で育てていく力を急速に失っている。企業と個人の関係が「一生の付き合い」を保証しきれなくなっているため、リスク丸抱えでゼロから人を育てることに腰が引けるようになってきている。つまり、できることなら、なるべく高いレベルまで自力で育ってきてくれた人を採りたいと思うようになってきたのである。これが最近企業のよく言う「人材の即戦力性」である(新卒における「即戦力」の意味については後章で改めて説明する)。

つまり企業は、「即戦力になるための教育は、もう企業では(できることなら)やりません。入社前に自分たちで済ませてきてください。そういう能力を持っている人を優先的に採用しますよ」と言っているのだ。企業は「戦力」を育てるための教育機能を内部に持つ余裕がなくなってきている。だから、入社試験を受けに来る前に自分でなんとかしてくださいと言っているわけだ。

これは大きなパラダイムの転換である。

今までは社会(家庭、本人、大学)全体が、人を育てる役割を企業に丸投げしてきた。だから社会にその機能が備わっていない。そういう状態のまま、企業から「私はもう教育できません。皆さんのほうでお願いします」とバトンを渡されてしまったというのが現在の状態だ。今の学生はその両者の狭間のエアポケットに落ちて、受け取り手がない。「シューカツ」で悩む原因はそこにある。なんとかしなければならない。

とはいっても家庭も大学も、半世紀も「仕事ができる人材を育てる」などという役割は受け持ってこなかったのだから、いきなりそんなことができるわけがない。親は相変わらず「勉強して、いい大学、いい会社に入りなさい」と言うばかりだし、大学は「早期化反対」である。本人も「自分で自分を育てる」という意識が薄いから、どうしていいのかわからない。

企業は「採りたい学生がいない」と言い、一方で学生は内定が出ずに徒労感ばかりたまるのは、まさに社会の人材育成機能が構造的な機能不全に陥っていることを示している。誰も社会が必要としている人材を育てる機能を担っていないのである。 社会において「誰が人を育てるのか」という巨大な問題の矛盾が凝縮されて表れているのが、大学生の就職活動という場なのである。

明日は、みんなで人を育てよう(01/16)です。


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目次
はじめに(12/24)


第1章「就活」の時代は終わった
「就活」は賞味期限切れ(12/25)
誰が次世代の人材を育てるのか(12/26)
企業への「所属」は頼りにならない(12/27)
安定とは休みなく進化しつづけること(12/28)
終身雇用と新卒採用は一体だった(12/29)
有名大学至上主義の背景(01/04)
なぜインターンシップが増えたのか(01/05)
変わる個人と会社の関係(01/06)
「就活」時代の終わりの始まり(01/07)


第2章「就活」の<ステップ0>
勝負はスタート時点でついている(01/08)
料理のおいしさは素材で決まる(01/09)
すぐに<ステップ0>を始めよう(01/10)
就活の「早期化」はほんとうに問題なのか(01/11)
学生のキャリア意識の高まり(01/12)
研究室と企業の関係(01/13)
人を育てる機能をどこが担うか(01/14)
企業から人材育成力が失われた(01/15)
みんなで人を育てよう(01/16)
「学び」と「仕事」を共存する(01/17)
「プロ学生」の時代がやってくる(01/18)
社会で役割を果せる力をつけろ(01/19)
目次の続きはこちら




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