2010 年 1 月 12 日

学生のキャリア意識の高まり

by koji

私は今起きている現象は「就職活動の早期化」というより、むしろ「学生のキャリアに対する意識の高まり」ととらえたほうが適切であり、建設的な解決策を生むことにつながると考えている。本来、大学三年生や大学院一年生の春あたりから就職を意識し、具体的な行動を起こすのはごく自然なことではないだろうか。その背景には、大学三年生および大学院生になる前に必ず行うゼミの選択や研究室選びが、否応なく卒業後の進路について考えるきっかけとなるという事情がある。

残念ながら、将来について具体的にイメージしないまま高校を卒業し大学に入ってしまった。本来であればゼミや専門分野の選択も、卒業後の仕事や進路についてもっと深く研究したうえで決めなければならないのだろうが、それも十分できていたとは言い難い――。そういう危機感が、仕事や企業に対する興味・関心となって、大学三年生や大学院一年生になった学生の意識を就職に向けることはごく自然なように思える。

実際にこの時期は就職活動といってもインターンシップへの参加機会を模索したり、自分自身のキャリアについて考えたり、友達と議論したりすることが大半であり、この種の「早期化」が学業に悪影響があるとは考えにくい。自分自身が保有している力は何か、自分自身の力を伸ばせる環境はどこか、自分自身の力を発揮できる環境はどこか、などと考え行動している結果であって、決して不適切な状況ではない。むしろ逆に将来に対する学生の意識の高まりが、「学ぶ」ことへの興味・関心を高め、学業にもプラスに働く面が強いと考える。

もっと言えば、大学一年生からこのような活動をスタートすれば、学業が忙しい時期には学業に集中して、落ち着いたところで、またキャリアについて考える活動をするということもできる。早期化を抑制すると、就職活動期間が短くなってしまい、結果、その期間は学業をおろそかにせざるを得ないという状況に陥ってしまう可能性が高い。

大学三年生の夏にインターンシップに挑戦することが当たり前になった状況は、学生にとっては歓迎すべきものだ。社会で活躍するために必要なことは何なのかに気づき、そして、将来あのような大人になりたいというキャリアターゲットとの出会いを得た学生は、その時から行動が変わり、成長が始まる。大学で学ぶ姿勢も変わってくるし、課外活動への取り組みも変わる。

後章で改めて述べるが、近年、会社や仕事についてさらに深く知りたい学生のために、「オープンセミナー」と呼ばれるさまざまなタイプのセミナーが増えてきている。今やたいていの情報は企業のウェブサイトやネット上の記事、動画などで手に入る。ネットでは知り得ないものを知るために、学生はさまざまなセミナーに積極的に参加している。

早い段階からキャリアを意識し、業界や仕事、企業について知ることができる「オープンセミナー」で進路に対する意識を深めることは、決してマイナスではない。むしろ学生が広く社会と触れ合い、大学とは異質の人々、異なる価値観の世界とコミュニケーションして、「社会化」することは、大いに意味があることだ。

明日は、研究室と企業の関係(01/13)です。

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目次
はじめに(12/24)


第1章「就活」の時代は終わった
「就活」は賞味期限切れ(12/25)
誰が次世代の人材を育てるのか(12/26)
企業への「所属」は頼りにならない(12/27)
安定とは休みなく進化しつづけること(12/28)
終身雇用と新卒採用は一体だった(12/29)
有名大学至上主義の背景(01/04)
なぜインターンシップが増えたのか(01/05)
変わる個人と会社の関係(01/06)
「就活」時代の終わりの始まり(01/07)


第2章「就活」の<ステップ0>
勝負はスタート時点でついている(01/08)
料理のおいしさは素材で決まる(01/09)
すぐに<ステップ0>を始めよう(01/10)
就活の「早期化」はほんとうに問題なのか(01/11)
学生のキャリア意識の高まり(01/12)
研究室と企業の関係(01/13)
人を育てる機能をどこが担うか(01/14)
企業から人材育成力が失われた(01/15)
みんなで人を育てよう(01/16)
「学び」と「仕事」を共存する(01/17)
「プロ学生」の時代がやってくる(01/18)
社会で役割を果せる力をつけろ(01/19)
目次の続きはこちら


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