2010 年 1 月 11 日

就活の「早期化」はほんとうに問題なのか

by koji

近年、企業と学生の接触が学生時代の早い時期から行われるようになったことに対して、「就職活動の早期化」だとして、教育活動の障害になると批判的に見る人が少なくない。しかし、私はそういう見方には反対である。

「早期化」の是正はこれまでも何度もテーマに挙がっている。たとえば、「授業にならない『青田買い』是正を大学三団体、企業側に要請」という記事によると「大学生の就職活動の時期が早すぎるとして国立大学協会(小宮山宏会長)などの三大学団体が、日本経団連や全国銀行協会、リクルートなど137団体・企業に対し、『青田買い』とも呼ばれる採用活動早期化の是正を求める要請書を提出した。(1)卒業学年当初や三年以下の学生に対する実質的な採用選考活動を慎む(2)採用活動は可能な限り祝休日や長期休暇に行う(3)正式内定日は卒業学年の十月一日以降―の三点を求めた」(二〇〇八年七月九日付『MSN産経ニュース』)

歴史を振り返ると、採用活動と就職活動は、何らかの問題が発生すると、大学や企業、官僚がお互いに話し合いをしながら就職協定を結ぶものの、景気がよくなると形骸化し、また早期化が進むということを繰り返してきた。どのタイミングで選考が行われるのかを決定する主導権は企業側にあり、学生はそれに対応する形で現在の就職活動のパターンが定着している。

すでに触れた通り、就職活動の本質的な問題点は、「企業社会」と「学生社会」の間に存在するギャップにその根源があるのであり、改革はその差を縮める方向でなされるべきである。ところが「早期化」を規制することは、むしろ企業と学生の間の距離を広げることにな

る可能性がある。これは問題を先送りするだけで、就職と採用の問題の解決にはつながらない。

上述したように、就職活動には〈ステップ0〉がある。就職活動の〈ステップ0〉とは、要は人が生まれてから大人になり、成長とともに「社会化」して立派に「仕事ができるようになる=社会で責任を果たせるようになる」ことである。決して「会社に入れるようになる」

ことではない。大学の授業を省みずに「会社に入る」ための活動をするのは私も反対である。だが「仕事ができるようになる」ことは大学教育と少しも矛盾しない。

明日は、学生のキャリア意識の高まり(01/12)です。

佐藤孝治の新刊『〈就活〉廃止論 会社に頼れない時代の仕事選び』(2010年1月16日発売PHP新書)をこのブログで日々連載中です。

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目次
はじめに(12/24)


第1章「就活」の時代は終わった
「就活」は賞味期限切れ(12/25)
誰が次世代の人材を育てるのか(12/26)
企業への「所属」は頼りにならない(12/27)
安定とは休みなく進化しつづけること(12/28)
終身雇用と新卒採用は一体だった(12/29)
有名大学至上主義の背景(01/04)
なぜインターンシップが増えたのか(01/05)
変わる個人と会社の関係(01/06)
「就活」時代の終わりの始まり(01/07)


第2章「就活」の<ステップ0>
勝負はスタート時点でついている(01/08)
料理のおいしさは素材で決まる(01/09)
すぐに<ステップ0>を始めよう(01/10)
就活の「早期化」はほんとうに問題なのか(01/11)
学生のキャリア意識の高まり(01/12)
研究室と企業の関係(01/13)
人を育てる機能をどこが担うか(01/14)
企業から人材育成力が失われた(01/15)
みんなで人を育てよう(01/16)
「学び」と「仕事」を共存する(01/17)
「プロ学生」の時代がやってくる(01/18)
社会で役割を果せる力をつけろ(01/19)
目次の続きはこちら



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6 件のコメント
2010年1 月 13日
sato permalink

佐藤社長様

新潟の佐藤と申します。
就職情報会社に勤務して十数年になります。
大変興味深く拝読させていただいております。

以下、つれづれにすみません。

ここ数年、就職活動のあり方がおかしいとずっと感じてきました。
(大きな要因が、自分たちにあることも自覚しつつ)

どこかお受験化してきていて、
「内定のとり方」をマスターすることに必死な学生、
実際、器用な学生はそれで内定がとれてしまうケースもあって、
大学3年のうちに内定もらって、あとは悠々自適の大学生活ですよね。
一方で、1年数ヶ月も就活してまだ未内定の学生は、
自信を喪失し、疲れはてて、うつ病寸前だったりします。


<ステップ0>については、おっしゃるとおりだと思います。
就活時期を迎えて、自己分析だ、なんだって言われる学生が
かわいそうだとも思います。

実際、今それを言われても・・という学生があまりに多く、
たとえばおとなしい性格だったり、特に特徴のない学生は
今の環境下では、なかなか内定がとれません。
就職相談にやってくる学生のほとんどは「普通のいい子」で、
働くに何の問題もないと思われ、どうアドバイスしてよいのか、
困っています。


昨年、春休みに近畿の大学から帰省して、
合同イベントに参加した学生が驚いていました。
「やっと帰ってこれたのに、もうほとんど終わりなんですね」

地元から遠い大学に進学したために、帰省しての活動が困難だったり、
部活や勉強に注力していたために、少し出遅れた学生は、
大学4年の夏でさえ、すでに希望するような就職先がない。

そのまま卒業してしまうと、もう就職はかなり難しい状況。

長くなりましたが、現状では、一斉就活からはずれてしまった学生が
その後、挽回し、就職する道がほとんどない、
そのことが非常におかしいと思うのです・・・。

どう思われますか?

2010年1 月 14日

佐藤さま コメントありがとうございました。就職情報会社でお仕事をされていると必ずこのような問題意識になると思います。しかしながら、日頃の業務の忙しさの中でそこまで対応しきれないというのが現状ではないかと思います。

「現状では、一斉就活からはずれてしまった学生がその後、挽回し、就職する道がほとんどない、そのことが非常におかしいと思うのです・・・。」という問題をどうすれば解決できるのだろうかということを、私なりに考えて、提言としてまとめたのが、今回の就活廃止論です。

この本をきっかけに人材業界で働かれている方と一緒に自分たちは何をしていくべきなのかを考えて行ければありがたいと思っております。

是非、ブログへのコメント、ツイッターでのコミュニケーションをさせていただければ幸いです。人材業界の皆さんと一緒にこの問題について考える会も行ってみたいと思いました。

今後ともよろしくお願いいたします。コメントありがとうございました。

2010年1 月 14日

現状として、

・就職活動の早期化によって大学(大学院)で全く勉強・研究しない学生が増えていること
・現在の就活自体が社会性を養うのにあまり役に経たないこと

なんかがあると思います。

私は理系の院生ですが、はっきり申し上げて就活の早期化は迷惑でしかないです。いつから大学(大学院)は就職予備校になってしまったのか?と思います。

>就職活動の本質的な問題点は、「企業社会」と「学生社会」の間に存在するギャップにその根源があるのであり
なぜそのように言い切れるのでしょうか、根拠を教えていただきたいと思います。

長文失礼しました。

2010年1 月 18日
sato permalink

佐藤社長様


 新潟の佐藤です。早速のレスありがとうございました。
 長々と駄文連ねて申し訳ありませんでした。
 
 これからも拝見させていただきます。
 まずは、就活廃止論、読ませていただきます!

2010年3 月 20日
kugenuma0805 permalink

こんにちは。就職情報業界に長くいるものです。

就職活動の早期化自体は問題ではないという説、強く共感します。仕事やキャリアに関して様々な機会を通じて自分の意見を形成していく時期は、大学の低学年か、むしろ高校や中学においてさえ、考えられるべきものです。

就職活動が学業に影響を与えている、もちろん学事日程や授業に影響を弊害を与えることはあってはならないことです。また、本来的な意味合いでの職業選択活動としての就職活動ではなく、いかに突破するかという「就活」論がはびこっていることも問題です。

が、昨今の早期化反対議論-「就職活動が早期化するから大学教育を終えられない、だから就職できない」「せめて大学4年の秋までは授業をしっかり学んで」的な-は、企業が新卒に求めている人材要件の高度化を無視したノスタルジックなものに思えます。

本質的な変化を無視した時期の規制議論や上っ面の就職弱者保護論によってこの市場の変化が止まらないように努力せねばならないですね。

2011年5 月 3日
permalink

就活が早期化して、コミュ力コミュ力いいだしたら、日本経済シュリンクしちゃいましたね。年寄の既得権益を守るために、若者の間引きをする。間引きの仕方が、コミュ力&縁故という生まれて20年ほどやってきた学業という本業とはかけ離れた足の引っ張り合い芸をやらせて判断するわけですから、やっぱり間違ってる訳です。すぐ離職するタイプの学生を採用した方が、企業としても人件費が浮くのから歓迎してるのかもしれませんし、エージェントである人材紹介会社としてはプリンシパル(企業や学生)を裏切って再就職サイトでも稼ぎたいですからね。わが国では人材リソース分野でのモラルハザードが起きてるんでしょう。

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