2010 年 1 月 8 日

勝負はスタート時点でついている

by koji

いわゆる就職活動のイロハとされる自己分析とか、エントリーシートの作成とかいった具体的な活動を〈ステップ1〉とすれば、それを始める以前の「経験と学びによって人間としての力を高める」という段階が〈ステップ0〉である。

割り切った言い方をしてしまえば、実はいわゆる「就職活動」を始めようと思った時には、もうかなりの部分で勝負は決まっている。超人気企業の採用担当者の中には「受かる人は受かるし、受からない人は受からないから、特に準備は必要ないです」というアドバイスをする人もいるくらいだ。

あるコンサルティングファームの採用担当者は「バーバラ・ミントの『考える技術・書く技術――問題解決力を伸ばすピラミッド原則』を読んで感動している人は受からない」という言い方をしていた。つまり就職のための準備段階で初めてこんなことに気がつくような人は、もとから相手にしていない、という意味である。この言い方はやや極端なようにも思うが、確かに〈ステップ0〉はある。就職活動は生まれた時からスタートしている。

小さい頃からコツコツとマンガやイラストを描き続けてきた人。商社マンだった父親の転勤とともに世界中で青春時代を過ごしてきて、英語、中国語、日本語がネイティブ級な人。親が病気がちで、中学生の頃から家計を支えようと頑張ってきた人。小学生の頃からコンピュータに興味を持ち、大学生の時にプログラム言語のリファレンスブックを出版しベストセラーになった人――。

今の自分は突然誕生したわけではない。生まれてきてからの一日一日があって、その結果の積み重ねとして今日の自分がいる。生まれてこのかた、何を考えて、どんな行動をしてきたのか。過去に自分が繰り返してきた何千万回、何億回もの選択の結果によって、自分は現在、ここにいる。そして、そのたびに繰り返してきた努力によって自分が磨かれていく。就職活動ではそのすべてが問われるのだ。就職活動には「経験と学びによって人間としての力を高める」〈ステップ0〉が間違いなく存在しているのである。

就職活動を始めるにあたり、エントリーシートを書こうとすると、何を書いていいのかわからずフリーズしてしまう人がいる。これまでの人生で〈ステップ0〉を意識したことがない人には書くことがないのだ。自分という存在をしっかりと見つめ、自分なりの戦略を模索しつつ懸命にものごとに取り組んだことがある人は、エントリーシートの質問に素直に答えていくだけでいい。面接も自然体で答えるだけで通ってしまう。

「厳しい」就職活動というのは総論としてはその通りだが、超人気企業に受かっている人は、実はあまり苦労をしていないことが多い。五回とか、多くても一〇回くらいの選考ステップを一カ月から三カ月程度の期間で淡々とクリアしていれば内定になる。特にバタバタしなくても「すーっと」誘われるように内定していく感じになる。まさに「受かる人は受かる」のである。

メディアなどで就職活動についての「厳しさ」が語られる時、そこでは「就職戦線が厳しいから受からない」という話と、もともと「それだけの力がないから受からない」という話を混同して、時には意図的に絶妙なすり替えを行いながら議論されていることがある。ハッキリ言ってしまうが、就職戦線が厳しかろうとそうでなかろうと、「それだけの力がないから受からない」人のほうが数のうえでは圧倒的に多いのである。また「内定の獲得が難しい」という悩みと、自分自身で「やりたいことを見つけて決めることが難しい」という悩みを一緒にして論じてしまっているケースも少なくない。

こう言ってしまっては身も蓋もないと思われるかもしれない。でもそんなことはない。受かるだけの力を今からでも身につければいいだけの話である。

今までの人生そのものである〈ステップ0〉で自分の歩んできた人生を顧みて、その足りなかった点に気づいた途端に成長を始める学生がたくさんいる。人は必ず成長する。バーバラ・ミントの『考える技術・書く技術』を読んで感動したっていいじゃないか。日々吸収した知識を、日々の生活の中で活かしていけば、人は必ず変わる。サークル、ゼミ、アルバイトなど身の回りの生活から自分の役割を認識し、より高い価値を発揮できるように意識することが大切だ。私は、就職活動をきっかけにして、自らの意識と行動を変え、一気に成長していく学生を毎年毎年、何人も見てきた。だから遅すぎるということは決してない。

明日は、料理のおいしさは素材で決まる(01/09)です。

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目次
はじめに(12/24)


第1章「就活」の時代は終わった
「就活」は賞味期限切れ(12/25)
誰が次世代の人材を育てるのか(12/26)
企業への「所属」は頼りにならない(12/27)
安定とは休みなく進化しつづけること(12/28)
終身雇用と新卒採用は一体だった(12/29)
有名大学至上主義の背景(01/04)
なぜインターンシップが増えたのか(01/05)
変わる個人と会社の関係(01/06)
「就活」時代の終わりの始まり(01/07)


第2章「就活」の<ステップ0>
勝負はスタート時点でついている(01/08)
料理のおいしさは素材で決まる(01/09)
すぐに<ステップ0>を始めよう(01/10)
就活の「早期化」はほんとうに問題なのか(01/11)
学生のキャリア意識の高まり(01/12)
研究室と企業の関係(01/13)
人を育てる機能をどこが担うか(01/14)
企業から人材育成力が失われた(01/15)
みんなで人を育てよう(01/16)
「学び」と「仕事」を共存する(01/17)
「プロ学生」の時代がやってくる(01/18)
社会で役割を果せる力をつけろ(01/19)
目次の続きはこちら


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1 件のコメント
2011年4 月 16日
tomura permalink

これを拝見していると、大学卒や若者を対象にしているが、自分みたいな40代で学歴もなく、経験も少なく、遠隔地に住んでいる人はどの業種を受けても、どこの企業も同じ理由で不採用の通知をしてくる。まだ、若者は希望があるが、自分みたいな中年は夢も希望もない。しかも、追い打ちをかけるように、年金も絶望的である。本当に、お先真っ暗だ。(ちなみに、正社員どころかアルバイトもパートも受からない)

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