2010 年 1 月 5 日

なぜインターンシップが増えたのか

by koji

すでに日本の企業社会では終身雇用という習慣が崩壊のプロセスに入っていることは周知の事実である。先に述べたように新卒採用は終身雇用の入口で、出口が定年退職だ。終身雇用の崩壊は先に出口から始まったが、それは次第に入口のほうにも及んできた。

そのひとつの表れが新卒の就職活動におけるインターンシップの普及である。

つまり従来は3月31日を持ってキッパリと学生と社会人が分かれていたのだが、その境目がぼやけつつあり、大学教育と「仕事」がさみだれ式に相互乗り入れを始めたのである。インターンシップには様々な形態があるが、もともとの誕生の経緯をたどれば、仕事経験のない学生が企業の中に入ってさまざまな職業を体験してみるところにある。

たとえば、米国では企業の採用活動は退職補充の経験者採用が基本なので、新卒者はどうしても競争に不利になる。そのため米国の大学生は少しでも経験者に対抗するために、大学時代から積極的にインターンシップに参加して職業経験を積み、その経験を就職の際の面接でアピールする。そのため米国のインターンシップは一般に勤務期間も長く、実際の業務をオフィスや現場で遂行するものであることが多い。日本の感覚で言えば、どちらかというと大学生のアルバイトに近い。アルバイトを単に収入のためではなく、将来の仕事選びや自分のキャリア構築と結びつけて行うのがインターンシップというイメージである。

米国では、大学と企業社会の境目が日本ほどはっきりしておらず、仕事と勉強が自然な形で行き来している。仕事をしている大学生もいるし、大学に通っているビジネスパーソンもいてるという感じで、必要なときに学び、必要なときに働く――という習慣が出来上がっている。つまり終身雇用が前提だった日本の社会のように、企業社会の「入口」と「出口」が明確に決められてはいないのである。その「学び」と「仕事」の過渡的存在がインターンシップであると言えるだろう。

日本におけるインターンシップは、次第に「ちょっと違うタイプの会社説明会」みたいな色彩が強まってきていて、米国とは少しイメージが違う。しかし大学生が仕事を決める際に、まずは仕事を体験してみるというやり方は、白紙の状態のまま、4月1日を期して自分の生涯を会社に預けてしまうという終身雇用全盛時代の就職活動とは大きく違う。このことは企業社会と学生社会との境界線のあいまい化が日本でも進みつつあることを表している。日本の新卒就職の文化も大きく変容してきていることを示している。

大学3年生の夏にインターンシップに挑戦することが当たり前になった状況は、学生にとっては歓迎すべきものだと私は思う。自分自身が社会で活躍できるポテンシャルがあるのか、自分には何が向いているのか、自分がこれからの人生で果たすべき役割は何か――といったことについて考えを深める機会を持つことに価値があるのだ。

社会で活躍するために必要なことは何なのかという気づき、そして、将来あのような大人になりたいというキャリアターゲットと出会えた学生は、その瞬間から行動が変わり、成長が始まる。大学で学ぶ姿勢も変わってくるし、課外活動への取り組みも変わる。

日本におけるインターンシップはほぼ10年の時間をかけて普及し、もはや就職活動になくてはならない存在になった。現在でも日本のインターンシップは年々増加を続けており、09年3月卒では41.2%の学生がインターンシップに参加した。さらに、10年3月卒では、3.8ポイント増加して45.0%の学生がインターンシップに参加している。

インターンシップについては賛否両方の議論があるが、学生が仕事や社会、企業に関する「気づき」を得るタイミングがこれまでより半年から1年程度早くなり、なおかつその気づき方がよりインパクトのある形になった意義は大きいと言えるだろう。

明日は変わる個人と会社の関係(01/06)です。

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目次
はじめに(12/24)


第1章「就活」の時代は終わった
「就活」は賞味期限切れ(12/25)
誰が次世代の人材を育てるのか(12/26)
企業への「所属」は頼りにならない(12/27)
安定とは休みなく進化しつづけること(12/28)
終身雇用と新卒採用は一体だった(12/29)
有名大学至上主義の背景(01/04)
なぜインターンシップが増えたのか(01/05)
変わる個人と会社の関係(01/06)
「就活」時代の終わりの始まり(01/07)


第2章「就活」の<ステップ0>
勝負はスタート時点でついている(01/08)
料理のおいしさは素材で決まる(01/09)
すぐに<ステップ0>を始めよう(01/10)
就活の「早期化」はほんとうに問題なのか(01/11)
学生のキャリア意識の高まり(01/12)
研究室と企業の関係(01/13)
人を育てる機能をどこが担うか(01/14)
企業から人材育成力が失われた(01/15)
みんなで人を育てよう(01/16)
「学び」と「仕事」を共存する(01/17)
「プロ学生」の時代がやってくる(01/18)
社会で役割を果せる力をつけろ(01/19)
目次の続きはこちら


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