2009 年 12 月 29 日

終身雇用と新卒採用は一体だった

by koji

ではどうして過去において、このような「所属モード」が定着してきたのだろうか?それは一口で言えば、日本の企業社会が「利益を生み出す新しい仕組みを作る能力」を必要としなかったからである。

1950年代以降、90年代の初頭まで日本経済は基本的に右上がりの成長が続き、大手企業の業績はほぼ一貫して伸び続けてきた。企業の売上高は年々増加し、社員の数も増えて組織はどんどん大きくなる。新しいポストが必要になるので、企業としては社員の評価・選抜をさほど厳しく行わなくても、ほとんどの人が一定の地位までは昇進することができた。企業の利益も年々増加してきたので、社員は人並みに仕事をしていれば給料もボーナスも毎年増えるのが当然だった。約40年もの間、日本の大手企業は基本的にこのような安定した時代が続いてきた。

この時期にビジネスパーソン時代を過ごした人はほとんど第一線を退いているだろうが、大手企業に勤務した人であれば公的年金や企業年金の額もそれなりにあり、住宅などの資産も形成されていて、経済的にはおおむね恵まれた条件にいる人が多い。

労働力のマーケットで見ても、経済規模は拡大続きだったから、企業にとっては慢性的に人不足の状態が続いていた。そのため企業は人材を社内に囲い込んで、できるだけ内部で育成していく方針をとった。どの企業も同じことをやるので、大手企業で他社に移ろうという人は非常に少なかった。長く勤めれば勤めるほど給与やボーナスが上がる年功的な賃金の仕組みや、勤続年数の長さに応じて定年退職の時に退職金が支給される制度など、企業は人を長期間社内引き留めておくための制度を次々と構築していった。

こうした勤続年数長期化の施策を行っているうちに、大手企業では一度入社したら定年まで一社に勤めることこそが美徳であり、あるべき姿だとの観念が醸成されてきた。このような状況下では、なまじ社会を良く知っている人材よりも、何も知らない真っ白な学生のほうが、企業の望むような形に染め上げやすい。妙に「社会化」していない学生のほうが育てやすかったのである。

こうした雇用慣行は日本古来のものではなく、1950~60年代の高度成長期以降に始まり、定着していった習慣である。無難に仕事をしていれば誰でもそれなりに昇進もできたため、仕事の成果で社員の評価に差を付けるという仕組みは十分には広がらなかった。万人が満足する評価はあり得ないから、どうしても摩擦が起きる。それよりも時に任せておけばほぼ全員が昇進・昇格し、待遇もよくなるのだから、その方が手っ取り早い。こうして年功的な処遇の仕組みができあがってきた。

当然の結果として、途中で会社を出る人がいなければ退職補充というニーズは生まれないので、企業の採用の主力は新卒採用になった。こうして時間がたつにつれて大手企業では新卒の人材を採用し、定年退職で人が出て行くというサイクルが確立した。だいたい新卒というのは企業で最も年齢が若い人材だから、年功序列の社内秩序を維持するのには都合がいい。誰でも若いうちは下積みで苦労するが、社歴が長くなればいい目を見られるようになる。将来を楽しみに若いうちは苦労に耐えるという風習が出来上がった。

次回は有名大学至上主義の背景(01/04)です。

佐藤孝治の新刊『〈就活〉廃止論 会社に頼れない時代の仕事選び』(2010年1月16日発売PHP新書)をこのブログで日々連載中です。



Amazonにて「全品配送料無料キャンペーン」が2010年3月31日(水)23時59分まで行われています。3月31日までにAmazonで〈就活〉廃止論をご予約いただくと送料が無料です。

目次
はじめに(12/24)


第1章「就活」の時代は終わった
「就活」は賞味期限切れ(12/25)
誰が次世代の人材を育てるのか(12/26)
企業への「所属」は頼りにならない(12/27)
安定とは休みなく進化しつづけること(12/28)
終身雇用と新卒採用は一体だった(12/29)
有名大学至上主義の背景(01/04)
なぜインターンシップが増えたのか(01/05)
変わる個人と会社の関係(01/06)
「就活」時代の終わりの始まり(01/07)


第2章「就活」の<ステップ0>
勝負はスタート時点でついている(01/08)
料理のおいしさは素材で決まる(01/09)
すぐに<ステップ0>を始めよう(01/10)
就活の「早期化」はほんとうに問題なのか(01/11)
学生のキャリア意識の高まり(01/12)
研究室と企業の関係(01/13)
人を育てる機能をどこが担うか(01/14)
企業から人材育成力が失われた(01/15)
みんなで人を育てよう(01/16)
「学び」と「仕事」を共存する(01/17)
「プロ学生」の時代がやってくる(01/18)
社会で役割を果せる力をつけろ(01/19)
目次の続きはこちら



この記事についてTweetする
コメントはありません

この記事にコメントする

*emailアドレスは公開されません

この記事のコメントをRSSで取得する

    最新記事
    最新のコメント
    ジョブウェブのサービス
    佐藤孝治ブログ最新記事