2009 年 12 月 26 日

誰が次世代の人材を育てるのか

by koji

誤解のないように言っておくが、私はいわゆる日本的雇用慣行といわれる年功序列・終身雇用はダメだというのではない。むしろそれは日本企業にとって、これまで非常に合理的なものだったのだと思う。現在でもそれが合理的である業界や企業も存在するだろう。合理的であったからこそ慣行として定着もしたし、その慣行の下、日本企業は飛躍的な成長を遂げた。

従来の「就職活動」も同じである。「ヨーイドン」式の同時期一斉方式の新卒一括採用という仕組みも、いろいろ問題はあったにせよ、その日本企業のニーズにおおむね合致していた。だからこそここまで「就職活動」が日本社会の年中行事として定着したのに違いない。私自身もそういう流れにのって就職し、社会に出た。

しかし問題は時代が変わってしまったことである。日本企業を取り巻く世界環境、経済環境、社会環境はバブル崩壊以降、この15年ほどで大きく変わってしまった。当然、会社の仕組みも大きく変わった。それにも関わらず、「就職活動」が変わっていないことが問題だと言いたいのである。

もちろんこれは学生だけが悪いのではない。企業、学生、大学という3者はもちろんのこと、企業をサポートする形で「新卒採用ビジネス」に携わっている、私も含めた数々の会社、学生の両親、そしてもっと言えば社会全体で考えていかねばならない問題である。なぜならば、この「就職活動」の問題は、本質的には「日本社会がどのようにして次世代の人材を育てていくのか」という問題だからである。

これまで日本経済の成長期には、(よい悪いは別として)企業が社会における人材育成の中心になってきた。仕事経験のない人材をまずは企業の内部に長期的に抱え込み、自分の手で育てていくというやり方で将来的な人材を確保するという戦略を企業はとってきた。見方を変えて言えば、日本社会としても、大学としても、両親としても、とにかく会社に入れてお任せしてしまえば、なんとか一人前にしてくれる――と思ってきたのである。

ところがこの15年ほどで日本の大手企業にはしだいにその余裕がなくなってきた。理由は簡単に言ってしまえば低成長である。成長期にはすべての人材を社内で育成し、自前で人材ニーズを解決してきたのだが、その余裕がなくなり、将来の経営幹部となるようなコアの人材は基本的には自前で育てるが、それ以外は自前主義にこだわらなくなってきた。従来なら終身雇用の「入口」から「出口」まで直通列車だったものが、途中で乗り降り自由な、出入りの多い組織になってきたのである。

いままで「入口」はひとつだったものが、原則的に途中下車も途中乗車も可能な「出入り自由」となれば、「入口」の持つ意味は変わらざるを得ない。変わるべきである。実はもう変わっている。にもかかわらず「就職活動」には大きな変化がない。ここが問題で、だから賞味期限切れだと言うのである。

もっと正確に言えば、「入口」の意味がすでに変わったことに、有能な人事部門の人たちは当然気付いているし、一部の賢い学生も気付いている。素早く変化に気付いたこの有能な両者は、それに見合った動きをして、有能どうしで阿吽の呼吸で話をつけて、お互いに満足のいく採用・就職活動をしている。その数はおよそ新卒学生全体の5%ぐらいだろう。この人たちは放っておいても問題ない。

問題は残りの95%である。この学生たちは、上述したような変化に気がついていない。もしくは気がついてもどうしたらいいかわからない。それであまたの情報に惑わされて右往左往し、矛盾だらけの「シューカツ」に怨念ばかり持つことになる。企業のほうも、5%の賢い学生が採れるのはごく一部の人気企業に限られるし、それだけでは数が足りない。だからもっと学生が欲しいのだが、採用したいと思えるような学生に出会わない。

こういう状況を変えなければならない。もちろん長年の慣行でこうなってきたことだから、そう簡単に変わるとは思えないが、変わる兆しはすでにたくさん見えている。皆が「変わるべきだ」と意識して、その方向に行動すれば、事態は一気に動く可能性があると私は見ている。

では何から変えていったらいいのだろうか。何が問題なのだろうか。

明日は、企業への「所属」は頼りにならない(12/27)です。

佐藤孝治の新刊『〈就活〉廃止論 会社に頼れない時代の仕事選び』(2010年1月16日発売PHP新書)をこのブログで日々連載中です。



Amazonにて「全品配送料無料キャンペーン」が2010年3月31日(水)23時59分まで行われています。3月31日までにAmazonで〈就活〉廃止論をご予約いただくと送料が無料です。

目次
はじめに(12/24)


第1章「就活」の時代は終わった
「就活」は賞味期限切れ(12/25)
誰が次世代の人材を育てるのか(12/26)
企業への「所属」は頼りにならない(12/27)
安定とは休みなく進化しつづけること(12/28)
終身雇用と新卒採用は一体だった(12/29)
有名大学至上主義の背景(01/04)
なぜインターンシップが増えたのか(01/05)
変わる個人と会社の関係(01/06)
「就活」時代の終わりの始まり(01/07)


第2章「就活」の<ステップ0>
勝負はスタート時点でついている(01/08)
料理のおいしさは素材で決まる(01/09)
すぐに<ステップ0>を始めよう(01/10)
就活の「早期化」はほんとうに問題なのか(01/11)
学生のキャリア意識の高まり(01/12)
研究室と企業の関係(01/13)
人を育てる機能をどこが担うか(01/14)
企業から人材育成力が失われた(01/15)
みんなで人を育てよう(01/16)
「学び」と「仕事」を共存する(01/17)
「プロ学生」の時代がやってくる(01/18)
社会で役割を果せる力をつけろ(01/19)
目次の続きはこちら



この記事についてTweetする
コメントはありません

この記事にコメントする

*emailアドレスは公開されません

この記事のコメントをRSSで取得する

    最新記事
    最新のコメント
    ジョブウェブのサービス
    佐藤孝治ブログ最新記事